#006: 料理人が見た世界のB面史

今週のメモ: 詰まるところ独裁者だってひとりの人間なのだ

B面って言葉自体がもはや歴史的なものかもしれない。

でも、どうしてもこの本の面白さを書き残しておきたい。歴史の教科書から私たちが学べることなんて歴史のごくごく一部、言い方悪いけど歴史の薄皮一枚かもしれないと痛感した。

私たちの育った世界ではサダム・フセインは独裁者でジョージ・ブッシュによればならずものだし、ポル・ポトは反知性を煮詰めた虐殺者だ。フィデル・カストロには親近感を抱けるものの、イディ・アミンはもうどうしようもない独裁者だ。教科書に載る西側視点の世界史観からしたら彼らはもれなく残酷な独裁者で処罰されるべき存在なのだ。アメリカという国も褒められたものじゃないけど自国民を虐殺したり飢餓に苦しめたという意味では彼らの肩を持つのは難しい。

とはいえ彼らだって一人の人間なのだ。

この本は独裁者を一番近くで見ていたお抱え料理人のインタビューを集めたもので、一人の人間としての独裁者の横顔を生々しく描いている。

ある料理人は独裁者に心酔しているしある料理人はどうやったら生き残れるかヒヤヒヤしながら仕事に明け暮れていて、またある料理人は純粋に独裁者を喜ばせようと独裁者の兄弟に母親の味を教わりに行ったりもしている。

教科書の歴史が世界正面から投影したものだとすれば(私は到底そうは思わないが)この本は私たちに歴史を俯瞰するためのもう一つの窓を提供してくれる本だと思う。

もし手元に30万年転がってきたら、たくさん本を買いたい。インターネットに落ちている情報なんてほんの一握りなのだから。

今週のお題「30万円あったら」