#019: MOTHER 3のもうひとつのテーマについて

発売から17年が経過したMOTHER 3を改めてプレイしている。

名作と言われるこのゲームだけど、前作に比べて世界観がちょっと暗い。
代々平和な暮らしを続けてきた小さなコミニュティに「カネ」と物質的な豊かさ(ここではテレビがその象徴として登場する)を教え込み、軍隊を押し込んで鉄道を作って支配下に置いてしまう一幕が、大人になった自分の目にはとても他人事に思えないのだ。

初めは多くの住民が「シアワセ」に背を向けていたのに数年もすれば過去の街がすっかり壊されて所謂現代的な人と街に更新されていく様は、民主化を絶対的な正義として東欧や中東の政権を軍事的/非軍事的にひっくり返し、焼け野原にした挙句に文化やコミュニティを破壊し資本の傀儡としてきたアメリカそのものではないだろうか
アメリカ的な価値観にそぐわない政治と文化の暴力による転覆は一旦シリアで終了したが、その後もアメリカを中心とした国際世論は性自認や多文化共生を(穏当なかたちで)この国にも押し込んでいる。

もちろん男尊女卑や性暴力のような解決しなければいけない問題はあるにせよ、性自認や文化の多様性はその土地に根を張り文化を維持するための役割を担ってきたシキタリの一部である。
メディアの煽動を間に受けてアメリカ追従をした先に豊かな暮らしがあるとは思えないのだ。戦後数十年の間に制裁を受けたり再占領されないだけマシだったかもしれないが、これから先の日本の未来を考えた時にアメリカの手足となり行動することに正当性があるとは思えない。

このゲームが世に出たのは2006年。

同時多発テロが起きたのが2001年で、その後アメリカは「正義の戦争」に突入していく。アフガニスタンを焼け野原にし、大量破壊兵器の濡れ衣を着せてイラクの政権を転覆させシリアを破壊した。SNSを使って民衆を先導して東欧諸国の政権をひっくり返し(カラー革命)た世界線糸井重里さんはどう眺めているのだろう?

きっとそんなテーマや思想はなかったと思うのだけど、もし機会があれば直接聞いてみたい。そんな機会ないと思うけど。